【1606】日本海洋掘削についての考察2/投資戦略
6/12の記事では、公開された資料から【1606】日本海洋掘削を取り巻く環境を分析し、どうやらかなりヤバそうだという話をしました。
その後、日本海洋掘削は会社更生法の適用を申請しました。いわゆる倒産です。
これを受けて、東証は日本海洋掘削株式の上場廃止を決定し、整理銘柄に指定しました。
上場廃止等の決定:日本海洋掘削(株) | 日本取引所グループ
整理銘柄指定期間:2018年6月22日(金)~2018年7月22日(日)
上場廃止日:2018年7月23日(月)
実質的な売買可能日は6月25日(月)~7月20日(金) の19営業日です。
6月25日(月)は値幅制限があるので1279円→979円(-300円)でストップ安となり、売買は成立しないと思われます。では日本海洋掘削の倒産に関して何もできないことはないのでしょうか?
本丸である日本海洋掘削がストップ安張り付きで何もできない裏で、投資家には何ができるのか想像してみましょう。私もいくつかのアイディアを思いつきましたが、このアイディアは共有すると利益が希薄化してしまうものなので後ほど追記する形になると思います。このアイディアが機能したかどうかも検証していきます。
2018年6月26日(火)の日本海洋掘削の売買について
6月25日の大引け後に制限値幅の撤廃と基準値段の変更がアナウンスされました。
売買の取扱いについて:日本海洋掘削(株)株式 | 日本取引所グループ
整理ポスト指定から2営業日後に制限値幅が撤廃されるのが恒例ですが、基準値段の変更というのはなかなかありません。確認してみましょう。
今回だけの特殊ルール(基準値段の変更)
基準値段 500円(前日終値979円に対してほぼ半額スタート!)
値幅上限値 600円
値幅下限値 1円
この値幅1円~600円は注文可能な値幅という意味です。
値幅下限については最初の約定値段が決定するまでの時限措置です。
50円で寄り付くことになればその日の制限値幅は20円~600円となります。
下限が固定されればその金額未満の注文は取り消されると思われます。
制限値幅のルール
一般的な制限値幅のルールは日本取引所のサイトで確認できます。
今回必要そうな部分だけ抜粋すると以下のようになります。
100円未満 30円
200円未満 50円
500円未満 80円
700円未満 100円
最初の約定値段が31円以下であれば下限は1円となります。
32円~99円だと約定値段マイナス30が下限に
100円~199円だと約定値段マイナス50
200円~499円だと約定値段マイナス80
500円~600円だと約定値段マイナス100
値幅上限については600円で固定されると思われます。
マネーゲームになるなら即日テンバガーすら狙える6月26日でしょう。
特別気配の更新値幅
500円スタートとは言え、約定するまでは規定のルールに則って推移します。
仕組みを確認してタイムスケジュールを組み立ててみましょう。
特別気配の更新値幅 | 内国株の売買制度 | 日本取引所グループ
必要な部分だけ抜粋します。
200円未満 5円
500円未満 8円
700円未満 10円
また、特別気配の更新間隔についても記載されています。
売買の取扱いについて:日本海洋掘削(株)株式 | 日本取引所グループ
2.気配の更新について
特別気配については、通常値幅・3分間隔で更新します。
1円張り付きまでのスケジュール
基準値段は500円ですが、買い気配・売り気配によって9:00時点で気配の更新があると思われます。500円以上700円未満の更新値幅は10円です。
基準値段:500(ここより上は更新値幅10円)
09:00 490(ここから200円未満まで更新値幅8円)
09:15 450
09:30 410
09:45 370
10:00 330
10:15 290
10:30 250
10:45 210
10:51 194(ここから更新値幅5円)
11:00 179
11:15 154
11:30 129
後場寄りも前寄り同様に値幅更新があるはずです。
12:30 124
12:45 99
13:00 74
13:15 49
13:24 34
13:27 29
13:30 24
13:33 19
13:36 14
13:39 9
13:42 4
13:45 1
さすがに即日1円張り付きはないとは思います。
日本海洋掘削の逆日歩
日本海洋掘削㈱株式に係る貸借取引品貸し申込みにおける品貸料の最高料率10倍適用について(6/25)
6月26日以降は当面逆日歩10倍のようです。
6月26日は火曜日なので持ち越すと3日分、実質30倍です。
最高料率については日証金に一覧表が掲載されています。
よくある質問 | 貸借取引について | 日本証券金融株式会社|貸借取引情報
終値によって逆日歩の金額が変わってくるのでこれもシミュレーションしておきます。
横軸の売買単位:100株単位(1株単位と比べるとかなり優しい逆日歩です)
縦軸の投資単位:~5万円(1単元の金額です。100円×100株なら1万円)
貸借値段:~500円(その日の終値)
最高料率:1円(1株当たりの金額です)
6月26日(火)に制度信用売りを持ち越した場合、
終値が500円以下であれば(おそらくそうなるでしょう)、
1株当たりの逆日歩は「最高料率1円×10倍適用×3日分」となり、
MAXで30円(1単元100株で3000円)となります。
終値2桁で持ち越した場合、最悪翌日のストップ安相当の逆日歩が発生するわけです。
逆を言えば制度信用の買い方は決済しない選択肢を得ることになります。
ちなみに売買単位が1単位だった場合、終値30円で逆日歩MAXだと
「最高料率100円×10倍適用×3日分」となりMAX3000円です!
軽く破産しますのでルールを学んでおくことは非常に重要です。
一方、買い方は持ち越しただけで100倍です。
現実にこういうことはめったに起こりませんが、売り方の持ち越し額に対して100%を超える逆日歩が発生することは過去にありました。
興味がある方は「音通 9万円 素麺」等で検索してみてください。
(※6月26日大引け後追記ここから)
6月26日(火)の日本海洋掘削売買反省会
前日比-90%超という派手は値下がり率ではあったものの、倒産株としての売買は低調な印象でした。考えられる原因は三つ。
・浮動株が極端に少ない
・IPOラッシュの真っ最中
・寄り付きの値段が高すぎた
こんなところです。それぞれ掘り下げてみます。
浮動株が極端に少ない
発行済み株式総数がわずか1800万株です。
一般的な倒産企業だと大規模な増資や株式分割で株式総数が1億株を超えることがよくあります。日本海洋掘削はIPO時の新規発行以降は増資もなく株式分割も行っていません。
さらに上位10社の大株主だけで1234万株、実に株式総数の2/3超を占めています。
6月25日(月)の売り玉はおよそ420万株だったので、実弾としての浮動株は500万株以下ではないでしょうか。
6月26日(火)の寄り付きは79円×306万4500株で売買代金は2億4209万5500円。
これではマザーズ銘柄のIPOの公募株よりボリュームがありません。
IPOラッシュの真っ最中
超大型IPOのメルカリを含め、マネーゲーム化しやすい小型IPOなどが立て続けにありました。倒産株に手を出さずとも類似案件には事欠きません。時期が悪い!
6/19火 【4385】メルカリ 吸収金額1306億円
6/20水 【6579】ログリー 吸収金額9.6億円
6/21木 【4386】SIG 吸収金額6.85億円
6/21木 【4387】ZUU 吸収金額4.6億円
6/21木 【9273】コーア商事HD 吸収金額11.3億円
6/26火 【9274】国際紙パルプ商事 27.6億円
6/27水 【4388】エーアイ 吸収金額6.52億円
6/27水 【4389】プロパティデータバンク 吸収金額7.73億円
6/27水 【4390】アイ・ピー・エス 吸収金額14.3億円
6/29金 【7030】スプリックス 吸収金額152億円
さらに【4391】ロジザードの抽選が6/25月、【1446】キャンディルの抽選が6/26火となっていて、ブックビルディングのための待機資金が必要でした。
6/26火にIPOだった国際紙パルプ商事は、一部で「パルプンテ」と呼ばれていました。その愛称の期待を裏切らず、とんでもないやらかし事件が勃発していたのです。
パルプンテ事件
主幹事のみずほ証券がシステムエラー終日ログインができず、当選した人さえ発注ができませんでした。公開価格344円に対し初値は450円、初値から1分後に高値470円を付けた後は急落し、後場はストップ安の370円に張り付き、大引けの比例配分のみの商いとなりました。ホルダーは気が気ではありません。
かの有名なジェイコム事件以来の、みずほ証券の大チョンボです。
株主総会ラッシュ
それに加えて6/26火は6月の権利付き最終売買日です。6月/12月決算企業にポジションを振り分けていたら倒産株に手を出す余裕はありません。3月期決算企業の株主総会の集中週でもあります。6/26火は342社の株主総会があり、全上場企業数約3600社に対しておそよ9.5%。6/27水は422社(11.7%)、6/28木は690社(19.1%)となっています。
この3日間だけで全上場企業の40%の株主総会が開催されます。
あらゆる要素がすべて詰め込まれた投資家にとって今年一番忙しい1日。
それが6月26日(火)でした。どう考えても間が悪すぎる!
寄り付きの値段が高すぎた
寄り付き79円は明らかに高すぎて買いにくい水準でした。
祭り待ちとしては20円以下を期待したのかもしれませんが、浮動株数を考慮した私の想定では30円台、高くても50円台前半だろうと考えていたので79円は明らかに高すぎる位置でのスタートでした。
寄り付き13:03:26 79円 306万4500株
高値 13:10:36 87円 900+1800+300+1500(合計4500株)
安値 14:20:23 59円 100+4200+1000+100+100+1000(合計6500株)
大引け 15:00:00 77円 7万5200株
出来高 1054万6900株
売買代金 8億361万円
VWAP 76.194(寄り付きを除くと75.043)
前日の逆日歩はMAXの2円を付けました。
10倍逆日歩回避のためか制度信用では売り玉、買い玉ともに返済が進みました。
6/26の信用残高速報(括弧は前日比)
売り残高 237900(-90500)
買い残高 50600(-53100)
差し引き -187300(+37400)
貸借倍率 0.212(-0.103)
翌日発表された情報によると、6月26日(火)の逆日歩はMAXの30円でした。
終値77円に対して38.96%相当です。
売り方は、相場格言どおり「頭と尻尾はくれてやれ」が正解でしたね。
今後も毎日10円付くなら売り方は決済を考えなければなりません。
そして、浮動株数の少なさが影響して株価1円を拝むことはないかもしれません。
今のところ出来高、値動きともに勢いが感じられません。
(追記ここまで)